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トリビア・ジャーナル552

★河瀬直美・監督の映画「殯(もがり)の森」が、カンヌ国際映画祭で、第二席のグランプリを獲得した。彼女は事前のマスコミ・インタビューに答えて、受賞に自信のほどを示す発言をしていた。これは日仏合作だし、彼女は審査員の感触をかなり内偵していたに違いない。話はーーグループホームで暮らす認知症の男性、という暗っぽいテーマだが、「もがり」というタイトルは音を聞いても分からないし、文字を見てもどう発音するのかさえ分からない。でもこのことばの意味を知ると、ふさわしいタイトルなんだろうと想像する。ただ、ルビが欲しい。映画や本のタイトルで、聞いたことも見たこともない漢字を使いたがる傾向があって、漢字の豊かさや奥深さを示すのは悪いことではないけれど、発音できないのじゃ困る。「殯(もがり)」の本義は、「荒城(あらき)」とも言い、高貴な人の本葬をする前に、棺に遺体を納めて仮に祀ることなんだそうだ。あるいは、そこから発しているのかもしれないが、「虎落(もがり)笛」という表現があって、電線や木々が風で鳴ることだという。このタイトルには、この双方がかかっている気がする。6月末にならないと劇場公開はされない予定だが、インターネットで予告編が見られるし、NHKハイビジョンでは、5月29日に異例の受賞記念・特別プレビューをやるそうだ。
★「仙名をたぶらかせてカネを巻き上げるには、刃物は要らぬ。気の利いたタイトルさえあればいい」ので、奇異な、あるいはもじりのタイトルにはからっきし弱い。清水義範の『疑史世界伝』(集英社)の新聞広告を見ただけで、「買った」と叫び、本屋に走った。でも、チラチラ見ただけで、決して早トチリではなく、面白そうな気配は感じられる。世界史が教えてくれなかった話として、私は「白人奴隷」の史実に仰天してその訳書を実現したほどで、私も歴史に隠されたウソや真実に、ただならぬ興味を持っている。だからこそ、いま膨大な分量に鳴きながらも、ファーガソンの「戦争」は示唆するところが大きいな、と思いながら、重圧にも潰されず、「耐えがたきを耐えて」、翻訳を続けている。疑史世界伝は、「魏志倭人伝」のモジリだとすぐピンとくるし、それだけで笑ってしまった。目次を見ると、「戦場のソクラテス」「ガリラヤのエキストラ」「おーい、サラディン」「あわただ史記」など、魅力的なネーミングが並んでるじゃありませんか。 仙名 紀

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